乙御前御消息

※乙御前御消息(おとごぜんごしょうそく) 

・通解

人には必ず二つの天が、影のように付き添っている。

いわゆる、一を同生天(どうしょうてん)といい、二を同名天(どうみょうてん)という。

 

この二天が、常に人の左右の肩に付き添って守護するから、罪のない者が天が罰することはない、

まして善人を罰するはずはないのである。

 

それゆえ妙楽大師は、「必ず心の固きによりて神の守りすなわち強し」等といわれている、

信心の堅固な者には神の守りが必ず強い、というのである。

 

このことは、あなたのために申すのである。


前々からの信心の志の強さについては申すまでもないが、

それよりも、なお、いっそう強盛の志を起こしていきなさい。

 

そのときは、いよいよ十羅刹女の御守護も強くなることを思いなさい。

 


・解説

本抄は、乙御前の母である日妙女に与えられた御書ですが、

一途に仏法を求め、御本仏をお慕いする日妙女の純粋な志に対して、

 

日蓮大聖人は「いにしえの御心ざしに申す計りなし」

と仰せになられ、その信仰の強さを愛でられています。

 

そして、

「人には皆、自分の一切の善業・悪業を天に報告するという

同生天(どうしょうてん)・同名天(どうみょうてん)が付いているのであるから、

仏の御心に適った信仰をする者には必ず諸天の加護がある」

 

と断言あそばされています。

 

この二天は、人が生まれた時から常に両肩にあって瞬時も離れず、

その行動の善悪を記して天に報告し、その人を守護するとされている者です。

 

そして、仏法の厳格な「因果律」を示すものと拝されます。

 

その「因果律」からいえば、誰が見ていなくても、自らが犯す謗法の罪は、

確実に自らの生命に刻み込まれるのであり、

 

逆に、誰に評価されなくとも、正しい法を持ち、

正しい修行を貫く人の生命には、絶大な功徳が積まれるのです。

 

ゆえに、固くご本尊を信じて一心に仏道修行を貫くならば、

必ず仏天の加護があって祈りも成就するのであります。