考えさせられる童話

世の中には、浅知恵で動く人はたくさんおります。仏典童話に、こんなお話があります。
むかし、むかしのお話。
インドのある国でお祭りがありました。
街の人も職人もみんな遊びに出てしまって、王様の庭師をしていた職人も遊びにいきました。

王様の庭には、たくさんの猿たちを飼っていました。そこで庭師は、猿たちにいいました。

わたしもお祭りに行こうと思う。しかし、この庭の苗木に水をやる仕事が残っている。

この庭はお前たちにとってもだいじな庭だ。
木のみや、花や若芽を取って食べているのだからね。
だからひとつ頼みを聞いてくれないか。
水袋と道具は置いていくから、わたしが帰ってくるまでに苗木に水をやっておいてくれないか。

すると、猿たちは、分かりました。と、言いました。
そして、庭師が出かけると、猿のかしらは猿たちに言いました。

お前たち、水は貴重なものだ、だから全部の木にたくさんやる必要はない。
一度、木を全部引っこ抜いてみなさい。
そうして、根がりっぱなものだけたくさんやりなさい。
根が少しのものは少しだけ水をやりなさい。と部下に言ったのです。

そうして作業をしていると、旅の賢人が通りかかりました。
いったいなぜ、そんなことをしているのですか?とたずねると、

これは、庭師から頼まれたことなのです。
と、答えました。

賢人は、知恵のない、愚かなものは、いいことをするつもりでかえって人のためにならないことをするものだ、悟ってサルをしかりました。そして、

せっかく骨をおりながら、
よいおこないもみずのあわ、
知恵のたりないあさましさ、
庭のせわするサルごらん、
と、うたを残して去っていきました。